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白銀御行の愛がない肉体関係


この作品は、白銀会長がかぐや様に告白成功した後、藤原書記と愛がない肉体関係を結んじゃう2次創作です。

・明日(1月24日以降)の展開次第で、パラレルになる可能性が非常に大きいです
・白銀会長が原作と比べると酷い人になっています
・直接的な描写はないですが、エッチぃことをしちゃっています。それに関係する用語もたくさん出てきます。

 以上の内容を許せる方のみお読みください。

 













 私立秀知院学園の生徒会長・白銀御行が副会長の四宮かぐやに告白をしてから、数ヶ月の時が流れていた。
 かぐやに告白を受け入れられた白銀は彼女と思い出を作る事に必死だった。思い出の内容は、他人から見れば小学生レベルの他愛のないものだ。それでも、両想いであったにも関わらず、相手からの告白を待って半年以上何の進展もなかった白銀たちにとっては飛躍的な進歩だった。
 白銀が必死にかぐやとの思い出を作ろうとしている事には理由がある。
 御行は海外への進学が既に決定している。
 彼が恋人と同じ時間を過ごせる期間は限られていた。再会までには数年以上の時間が必要となる。その事が御行を積極的にしていた。
 そして、彼も木石ではない。人並みに性欲を持った思春期の少年だった。
 恋人と肉体関係を持ちたい。そんな欲望も大いにある。
 そして、白銀とかぐやの5回目のデートが目前に迫ったある日。
 事件は起こった。


「会長、かぐやさんとデートするって本当ですか!?」
 秀知院学園・生徒会室の扉を叫び声と共に開け放ち、生徒会書記・藤原千花が飛び込んできた。
「藤原書記。あぁ、事実だが、それがどうした」
「かぐやさんから聞いた限り、二人ともエッチをする前提の日程なんですけど」
「それは、まぁ、その……」
 しどろもどろに答えつつも、白銀御行は眉を寄せる。
 藤原は真剣な眼差しで白銀を見つめていた。付け加えると、その眼差しから光が消えている。他人の恋愛話やゲームに興味を持っているときの表情とは違う。
「藤原書記、何が言いたい」
「会長、セックスできるんですよね」
「昼間からなにを聞いているんだ、おまえは」
「はぐらかさずに答えてください」
 淡々とした声で、藤原が言葉を続ける。
「セックス、できるんですよね」
「それは……」
 白銀は思わず腕を組んで考える。白銀御行は童貞だ。はっきり言って、自分のセックススキルは未知数といえる。
 だからこそ、白銀は控えめに答えた。
「平均……よりも、ちょっと苦手かもしれないが、問題ないと想うぞ」
「なるほど、駄目なんですね」
「人の話、聞いているのか」
「その返事で大丈夫だったこと、ほとんど無いじゃないですか!」
 藤原の叫びに、白銀はそっと目をそらす。彼女の発言には多くの積み重ねに基づいたものだ。そして、その度に白銀の特訓につき合った藤原が血と汗を流してきた。その事について、白銀自身申し訳なく思う気持ちがないわけではない。
「しかし、今回は生物としての本能に根ざした行為だからな。何とかなるだろう」
 白銀は自信たっぷりに言う。
 そう。今回の問題は今までの物とは違う。
 生殖行為。それは、すべての生物に備わっている子孫を残す機能。本能に根ざした行為ならば、最低限のレベルには達していることは疑いようがない。
「すいません会長。それ、何の根拠にもなっていません」
 ふと、生徒会会計・石上優の冷たい声が響く。
「石上君……いつから?」
「初めからいましたよ。藤原先輩が会長しか見ていなかっただけです」
 藤原の震える声に、石上が落ち着いた様子で答える。白銀に数多くの欠点があり、その矯正を藤原が手伝っていたことは二人だけの秘密となっている。破天荒な性格ながらも、白銀との約束を守ってきた藤原にとって、先ほどの白銀の秘密を漏らしたような発言を石上に聞かれたことは不本意だったのだろう。
「まぁ、藤原先輩と会長との間に何があったかはとにかく」
 ため息をつきつつ、石上が言う。藤原が漏らした白銀の欠点や特訓については全く興味がないし、他言するつもりもないのだろう。
「本能に刻まれているから大丈夫って理屈が正しいなら、全人類正しいフォームで走れるはずなんですよ」
 石上の淡々とした声を聞きつつ、白銀は思案を巡らす。石上の言葉には、かつて陸上部として練習を積み重ねてきた者ならではの重みが有った。よくよく考えれば、野生動物とて遊びを通じて体の動かし方を学んでいる。それでもなお、狩りの巧拙には個体ごとの差が現れてしまう。
 本能に根ざした行為ならば、最低限の事は未経験でも何とかなると言う白銀の理屈は、よくよく考えてみれば何の根拠もなかった。
「まぁ、仮に俺がセックスが下手だとしてもだ」
 気を取り直しつつ、白銀は言葉を続ける。「あくまでも実際に下手だって認めないんですね」等という藤原書記のつぶやきは脇に置く。
「四宮は俺の下半身ではなく、人格を認めてくれた上で俺の告白を受け入れてくれたんだ。俺たちの愛は、そんな事で崩れはしない」
「会長。それ、エロゲーでヤリチンにヒロインを取られる男のせりふです」
「それ、ゲームの話だろ! 現実の俺と四宮には関係ない!」
「いえ、そうなんですけどあまりにもテンプレすぎて……」
「そんなこと問題じゃありません!」
 藤原の叫びが、男二人の不毛な言い争いを遮った。
「会長がかぐやさんを寝取られたとしてもなにも問題ありません。会長が笑い物になるだけです」
 真剣な眼差しで藤原が言葉を続ける。
「でも、かぐやさん、去年の春まで「初体験」をキスだと思うくらい、知識無かったんですよ。人一倍、エッチを上手に、優しくしてあげないといけない人じゃないですか」
 その言葉に、白銀は愕然とする。藤原が言うように、かぐやの性に関する知識は非常に疎く、一時期はキス以上の概念が存在しなかった。現在は独学により最低限の知識を持っているが、それでも高校生の平均と比べれば性行為への免疫や知識は非常に疎い。
「もし、会長のセックスが破滅的に下手だったら、一生物のトラウマを背負うことになるんですよ。そんなの、四宮さんが可哀想です」
 藤原の言葉を受けて、白銀は静かに目を閉じる。性交渉の知識が非常に疎いかぐやが自分に体を任せる。その行為や覚悟を、自分は軽く考えていたのかもしれない。だからこそ、目の前で藤原が切々と訴えているほどに、かぐやのダメージを考えることが出来なかったのでは無いだろうか。その上で改めて決意する。彼女の決意に答えるためにも、一夜をともにするならば彼女が満足するようなセックスをしなければならない。
「俺のセックスのスキルが重要であることは分かった」
 ゆっくりと目を開けて、白銀は呟く。
「だが、どうやってその技能を見極める?」
 生徒会室に沈黙が流れた。
 そう。白銀がどんな決意をしようとも、問題が性交渉がらみである限り大きな問題が立ちはだかる。
 セックスは一人では出来ない。能力査定にしろ練習にしろ、相手が必要になる。
 課題や目標が分かったところで、相手がいない以上、問題解決のためのアプローチの手段が存在しない。
「分かりました」
 しばしの沈黙の後、藤原千花がゆっくりと口を開く。
「今から3人でラブホテルに移動しましょう。そこで、私が自分の体で会長のセックススキルを見極めます」
「な、何!?」
 藤原の決意に満ちた声に、白銀は目を大きく見開く。石上の「……何で僕まで」と言う呻き声が、いやに小さく聞こえた。
「お前、本当にそれで良いのか?」
 震える声で白銀は訪ねる。奉心祭の直前、白銀は藤原に自分の男性としての魅力について質問したことがあった。藤原の返答は「死んでも嫌です」。男としての魅力を感じず、仕事としての上司はとにかく交際相手としては決して選びたくないと言う辛辣な物だった。
「正直に言うと……」
 ぽつりと、藤原が言葉を漏らす。
「ものすごく嫌です。私の初めてを死んでもつき合いたくない人で失う事になって、泣きたくて仕方ありません」
 焦点が合っていない瞳で、滔々と自分の心中を告げる。石上の「じゃあ、しなければいいのに」と言う呟きが無視されていることは言うまでもない。
「でも……」
 藤原の声のトーンが変わる。
 それまで支配的だったおびえと後悔が消え、彼女なりの意志を持ったしっかりとした声が紡がれる。
「これでかぐやさんがトラウマを負う可能性が少しでも減るなら……私の一番の友達の為になるなら、会長とだってセックスして見せます」
 まっすぐに白銀を見つめて、藤原が宣言する。
 その姿に、白銀は思わず目頭を押さえた。死ぬほど恋人にしたくない男(白銀御行本人)に抱かれることもいとわない。四宮かぐやの……白銀が恋人に選んだ女性のために、そうまでして身を尽くしてくれる。その事がうれしくて仕方がなかった。石上が「え、ちょっと待ってください。どうして、そうなるんですか?」と呟いているのはきっと気のせいだろう。
「いくぞ、藤原書記」
「はい、会長」
 かくして、秀知院学園の生徒会長、書記、会計は3人そろって、明らかに間違っている使命感とともに繁華街へと繰り出したのである。





 1時間後。

 秀知院学園から少々離れた地点にあるラブホテルの一室では、ある惨状が広がっていた。
 なんだかよく分からない理屈で連れてこられた会計の石上優が、室内のソファーに腰をかけて携帯ゲームをプレイし、
 生徒会長である白銀御行が、ベットの上に全裸で正座をし、
 これまた全裸で、書記の藤原千花がベットの上で泡を吹いて倒れていた。
 室内を非常に気まずい沈黙が包む。
 そのまま、10秒、20秒と時間が過ぎようとしていた頃、泡を吹いていた藤原が意識を取り戻したのかゆっくりと上体を起こして、叫んだ。
「う、嘘つき!」
 藤原の叫びがラブホテルの部屋中にこだまする。防音対策をされているはずの壁を突き破り、周辺の建物にまで届くようにすら思える大絶叫だった。
 藤原千花がベットに倒れていた理由を説明しようとすると、次のような文章になる。
 白銀御行のセックスは、常識を遙かに越えたレベルで下手だった。
「ちょっとだけって言ったじゃないですか!」
 藤原が涙目で絶叫する。石上が「いや。藤原先輩、たしかこの惨状を予測してましたよね」と言う趣旨の発言をしている様な気がするが、藤原の泣き声にかき消されてよく聞こえない。
「い、いや。俺はできるかぎり四宮を喜ばせようとしていたんだが」
 しどろもどろに白銀は弁解する。とりあえず、先ほどまで自分が抱いていたのは四宮かぐやでは無く藤原千花であるという事実は脇に置く。
「とにかく、会長のセックススキルは酷いとしか言いようがありません」
 涙を拭き、毅然とした声で藤原が言う。
「綿々と続いてきた人類の歴史に謝罪する必要があるレベルです」
「そこまで言うか」
「謝罪する必要はないと思いますけど……」
 石上もまた困惑しきった声で言う。
「意図は分かるんですけど、どうしてそんな出力になったって動作が多すぎましたね」
 石上の言葉に、白銀は思わず腕を組む。現生徒会において、石上は役員の壁を越えて白銀と親しい役員だ。その彼が藤原と一緒になって批判しているのだから、自分のセックススキルは事前予想を遙かに下回っていると言わざるを得ない。
「アウトかセーフで言えば、ぎりぎりアウトのレベルです」
「ぎりぎりどころか明確なアウト! それも、人類として評価される上手い下手のレベルじゃなくて、別の生物種に評価を移した上でなお、評価の対象外になるアウトですから!」
 三度、藤原の絶叫が響く。御行自身は勿論、彼のセックススキルに若干でも理解を示すものにまで怒りを燃やす、魂の叫びだった。
「そうなると、四宮とのセックスするのはあきらめた方が良いんだろうな」
「そうですね。かぐやさんの為にも、是非ともそうしてください」
 白銀の呟きに、藤原の冷たい声が応える。普段の白銀ならばここであきらめたりはしない。ある時は藤原千花を巻き込んで、彼女の協力が得られないとしても一人で特訓をして苦手なことを克服する。だが、今回の問題は性交渉。相手がいなければ特訓が出来ない。そして、特訓をすると言うことは、四宮かぐやとは別の女性と何度も肉体関係を持つことにほかなら無い。そんな、自分に好意を持っている女性に対する裏切りを重ねることは出来なかった。
「会長は、それで良いんですか?」
「まぁ、残念ではあるけどな」
 白銀はため息混じりに返す。
「だが、四宮がトラウマを背負うよりは何倍もマシだ」
「それで、本当に四宮先輩が幸せになれると思っているんですか?」
 白銀を、石上の冷たい眼差しが射抜く。。
「僕の恋愛観はラブコメやエロゲーを通じたものしか有りません」
 そう前置きをしてから、石上が続ける。
「でも、両思いの人からまったくそう言うことを求められないのって、とってもつらいと思います」
「それはそうだが……」
「それに、エロゲーとかだと、人格者とつき合っているヒロインを寝取る男って暴力とセックスしか取り柄がない男なんですよ」
 石上の重々しい声が響く。
「ゲームなら、女が寝取られた時点でハッピーエンドです。でも、現実はそれじゃ終わらない」
 白銀は思わず顔をしかめた。「ハッピーエンド」が何一つハッピーで無いことを脇に置けば、石上が言うことは分かる。暴力とセックスだけが取り柄の男が、一般的な社会で認められたという話は聞かない。体力に余裕がある20代から30代前半はそんな男でも通用するかもしれない。だが、年をとるに連れ、単純労働の仕事をこなすことが難しくなり、腕っ節で問題を解決する機会は著しく減り、最後には困窮した生活だけが残る。
「しかし、四宮がそんな計算が出来ないわけがないだろう」
「確かに、今みたいな精神的に余裕がある先輩なら大丈夫でしょう。でも、好きな人から愛情を具体的な形で示されなかったりしたら、精神的にはどんどん消耗していきます」
 消耗しきった精神では正常な考えが出来るか分からない。石上はそう言いたいのだろう。
 では、かぐやに愛情を示すため性交渉に応じてみたらどうなるか。
 考えるまでもない。藤原が泡を吹く程下手なセックスがかぐやの心にトラウマを植え付け、正常な思考能力を根こそぎ奪い取るに決まっている。
「もし、ゲームみたいな流れで四宮先輩がヤリチンに寝取られたら……」
「それ以上は言うな!」
 白銀は大声で石上の言葉を遮る。
 その先は、言われずとも分かっている。年月がたつに連れ、かぐやの生活は破綻していく。せめて、自分の子供を底辺から脱出させようとするかぐや。だが、男を選んだ経緯が経緯だけに、かぐやは四宮財閥からにらまれることになる。そのため、本来の能力を生かせる職に就くことも出来ず、低賃金のパートを掛け持ちすることになる。結果、子供たちに高等教育を与える機会そのものを得ることが出来ない。勉学だけではない。博物館や美術館を通じて広い世界を伝える機会をもてない。彼女自信に高い能力があるにも関わらずだ。そんな日々が、かぐやの精神をすり減らしていく。
 かぐやが他の男を選ぶよりも、その結果心をすり減らしていくかぐやを(想像の中ではあるが)見る方がつらかった。
 気づけば、藤原がすすり泣く声も聞こえる。彼女も白銀と同様の結論に至ったのだろう。
「よく、分かった」
 呼吸を落ち着けつつ、白銀は言葉を吐き出す。
「俺がまともなセックスを出来るかどうかに、四宮の今後数十年の人生すべてがかかっているんだな!」
 あんまりと言えば、あんまりな結論を堂々と口にする。ここに第3者がいれば別の視点を提供できたのだろうが、不幸にも今代の秀知院生徒会にはスペックが高いポンコツしかいなかった。
「藤原書記。四宮のためにも、俺は今度のデートまでにセックスを極めないといけない。協力してくれるか」
 藤原をまっすぐに見つめつつ、白銀は言う。かぐやへの裏切りである事は分かっている。それでも、彼女の未来のことを思えばセックスの特訓をしないわけにはいかない。全裸である事など、全く気にならなかった。
「仕方ないですね」
 どことなくあきれたような声で、藤原が答える。
「かぐやさんも会長も、私にとって大切な友達なんです。それに、会長がポンコツであることはいつもの事です。お二人が幸せになれるなら、私は喜んで力を貸しますよ」
 その言葉を聞いて、白銀は思わず目頭を押さえる。友情のためにここまで尽くしてくれる藤原には、いくら感謝をしてもしたりない。
「ところで、四宮先輩の方は大丈夫なんですか?」
 石上が不安げに言う。
「大丈夫です。かぐやさんは大体のことは上手にこなせますから、責めるときに力を入れすぎて会長をものすごく痛がらせるとか、そんな事は……」
「セックスは知らんが、マッサージは死ぬほど痛かった」
 白銀の述懐に、あたりの空気が止まる。かぐやは他人の体に触れるときの力加減を分かっていない。少なくとも、マッサージの時はそうだった。
性交渉の時も同様の事故が起きる可能性は非常に高い。
「じゃあ、四宮先輩も一緒に特訓受けた方が良いんじゃないですか」
 石上がのんきな声で言う。
 ふと藤原を見ると、顔面を蒼白にしてガクガクとふるえていた。そう。彼女は気づいてしまったのだ。この件で彼女が何とかしなければならないポンコツは一人だけではない。
 ラブホテルの天井を仰ぐ藤原の両目には、なぜか涙がたまっていた。

 本日の勝敗-藤原の敗北

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